オシム氏死去



元サッカー日本代表監督のイビツァ・オシム氏が今月一日亡くなられた。ご冥福をお祈りいたします。

オシムさんで忘れられないのが一九九〇年六月十日イタリアワールドカップ初戦の西ドイツ戦。この時はユーゴ代表の監督として出場していた。ユーゴという国は五つの民族、四つの言語、三つの宗教、ふたつの文字を内包する国家。各共和国のメディアは、同胞の名を先発メンバーに記すことを望んだ。そこでオシム監督はメディアの期待に応えるべく大胆な策に出たのである。使え、使え、とうるさい攻撃タレントを三人一緒に使ったのだ。するとどうなったのか??アタックが好きな三人の影響で守備人に負担がかかり過ぎてしまったのである。結果は無残にも1-4という惨敗である。サッカーでこの点差というのはかなりの力差か凡試合をしてしまったかのどちらかである。当然後者の凡試合でオアシム監督はわざとやったのだ。各共和国メディアの要求に応えて・・・。全員が攻撃的で全く守る選手がいない。そんなことでサッカーが成立するはずがないのだ。

その後六月十四日の第二戦のコロンビア戦から本来の采配を振るいだし勝利を収めると、続く六月十九日第三戦のUAE戦も1-4で勝利し決勝トーナメント進出を果たしたのである。

ワールドカップというサッカー界最高峰の大会の初戦をわざと負けて見せてメディアを沈黙させるといったことはなかなかできない。いやなかなかどころか全くできないのが人間だ。だがオシムは違った。

これだけの監督がJリーグや日本代表に来てくれたのは本当にすごいことだと思う。このレヴェルの監督ならヨーロッパのメガクラブや代表監督になっても不思議ではない。良いサッカーを見せてくれて本当に有難うございました。安らかにお眠りください。